[【殺人ゲーム】クリック!]
少しの沈黙の後、浅く溜め息を吐いて、母は台所に戻っていった。
このまま母を、殺してしまおうか。
殺人ゲームのように。
面倒な人間関係は切ればいい。
いらない人間は殺せばいい。
嗚呼、ちょうど台所に包丁があるじゃないか。
母に新聞を持たせて刺せば、返り血を浴びることもない。
凶器は?どこへ捨てる?
現場へ放置する?
犯人の痕跡は?
魔術師のように全て消すのか?
母を殺された可哀想な遺族。
テレビにも出ちゃったり?
「犯人を絶対に許せません!!」とか言ってみちゃったり。
…笑えない。
「お母さん…。」
あたしの声に、トントントン、とリズミカルに奏でていた包丁を停める。
「…今日は亜季の好きなハンバーグだからね!」
妙に明るい声。
今までの邪念が消化される。
プラスの感情がゼロに下がり、
マイナスの感情がゼロに上がる。
ホロリと流れた涙が、妙にくすぐったいと思った。