まだ君を愛してる
水族館に着くと、彼女は歓喜の声をあげた。

「わぁ・・!綺麗!!」
「そうだねー、でもこの海は泳げないねー」
「どうして・・?」
「汚いし、何より波があるから流されやすいんだよ。だから危ないんだ」
「詳しいねー。」

あはは、と笑って館内に入る。
涼しい館内ではお土産コーナーは人で溢れかえっていた。

「すごい人だね・・。」
「そうだね、でもお土産コーナーはまだ行かないから安心していい・・と思う。」

俺も混雑状況を把握できてないのでそのへんは曖昧なのだ。

館内の魚や海辺の動物を見ていると、彼女は「そういえば・・」と声を漏らした。
俺は、まだ告白するときではないのでまだ言うつもりはない。
だけど彼女からそれを催促されたらするほかはない。
でも彼女がそこまで積極的だとも思えない。

「どうしたの?」
「私、廉さんの本当の名前知らない・・。」
「あ、そうだったね。俺は篠崎優輝だよ」
「優輝くんかぁ、了解!私は楠木さくらって言います」
「さくらちゃんね、了解」

名前もゲットしたし、あとは夕方を待つばかりである。
夕方、涼しくなってからのがいいと思ったのだ。
ただでさえ暑いのに告白して暑い状況を作っても・・と思ったのだ。
甘いムードを、とか全く考えてないしそもそもそういうのが苦手なのである。

< 18 / 60 >

この作品をシェア

pagetop