まだ君を愛してる
『引きこもり』それが私にぴったりの言葉。
パソコンに向かって一日を過ごす。
外に出るわけでもないし遊びにいくこともない。

私は寂しかったんだ。
母親も父親も私を通信大学に入れると勉強は自力でやれとしか言わなくなった。
教えてくれる人はいない・・だからこそ難しくてネットで時間を潰す日々。

時間が潰れればなんでも良かった。
私を理解してくれなくても時間さえ潰れれば。

「さくら、ご飯。」

ドアの外で母親が呼んでいる。

「今行く。」

部屋から出ても家からは出ない。
そんな引きこもりの名前が、楠木さくら。
そう、私のことだ。

階下に降りてみると、ご飯が出来ていた。

「さくら、明日お父さんが洋服を買いに出かけないかって。」
「嫌だ。」
「お父さんとたまには遊んであげて。」
「外が怖いのよ、出れるわけないじゃない!」

外が怖い、人が怖い、男の子が怖い。
父親も母親もそれはわかってくれている。
だからこその外出の誘いなのだろうと思うのだが、私には苦でしかない。


「遊んできたいならお母さんとデートでもしてきたらいいよ、私はいかない。」
「じゃあ、スカイツリー!さくら、見たいってこの前言ってたよね?ねぇお父さん行きましょうよ。」
「そうだな・・さくら、東京タワーよりも高いんだってスカイツリー。行かないか?」
「嫌だよ、写真でいいよ。見たって変わらないよ。」
「そんなこと言わないで・・行きましょう?」
「嫌だってば。行くなら二人でどうぞ。」

その会話が終わる頃に私は食事を済ませて箸を置いて「ごちそうさまでした」をしていた。

「私、2階に戻るね。」

母も父も心配しすぎだと毎回思うばかりであった。
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