天神学園高等部の奇怪な面々29
「そんな事はどうでもいいのだ、ほれ、しっかりついてこんか、わたるん」

強引に渉の手を引っ張る龍娘。

「夏祭りは年に一回しかないのだからな、目一杯楽しまねば損だぞ?」

「……」

『年に一回しかないのだから』

似たような思考を、つい先日まで渉もしていた。

『どうせ二十歳までなのだから』

『あと三年しか生きられないのだから』

命の期限を切られた事で、何事にも感動を覚える事はなかった。

だが、同じ期限を切られても、龍娘は少し違うらしい。

『年に一回しかないのだからこそ、目一杯楽しまねば損』

貴重な時間を有効に使いたいという、前向きな思考の表れ…。

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