天神学園高等部の奇怪な面々29
暗い青に、刺し子で黒の鳥の模様が入れられた木綿の浴衣。

腰には愛刀・川蝉。

こうして夏祭りの人混みを歩いていると、江戸の街にでもタイムスリップしたような錯覚に陥る。

それほどに、翡翠の着こなしは堂に入っていた。

その隣を歩く、赤い地に金の朝顔の刺繍の浴衣の奥方。

彼女自身の美しさも相俟って、その浴衣姿はしっとりとした大和撫子ぶりを存分に見せつけてくれる。

浴衣姿に西洋のぬいぐるみを抱える姿も、夏祭りの中では意外と違和感がない。

違和感があるのは、こんな楽しい一時に不機嫌な翡翠の表情のみ。

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