天神学園高等部の奇怪な面々29
「この刀を売っていた屋台は、早々に売り切れで店じまいしていた」

翡翠はそんな下手な嘘をつく。

「ええぇ~っ」

声を上げる男の子。

「そんなに残念がるな」

翡翠は続ける。

「また来年も来ると言っていた。それまで、無駄遣いせずに小遣いを貯めておくといい。来年は、この刀よりももっといいのを売りにくると言っていたからな」

「ほんとうっ?」

「む…ほ、本当だ…」

嘘も方便とはいえ、やや戸惑いがあるのか。

僅かに言葉に詰まるが。

「だからここはひとつ」

翡翠は男の子の小さな手に、硬貨を一つ握らせる。

「綿飴でも食って機嫌を直せ。男なら辛抱も大事だぞ」

「うんっ、がまんする!ありがとうおじさんっ!」

「おじっ…」

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