ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「ねぇ、薫さん。

お願い、あたしに絵を教えて。

薫さんの絵、ホントに大好きだから」


気がつくと、あたしは必死で懇願してた。

そんなあたしをしばらく無言でじっと見ていた薫さんは。

ふっとやさしく微笑んで言った。


「君にオレが絵に関して教えることなんて何もないよ。

別に絵の技術なんて習ったこともないし、好きなように描き散らしてるだけだから。

むしろ技術なんて、柚希ちゃんの方がずっと高いと思うよ。

オレはデッサンの技法すら、何も知らないんだから」

「……でも」

「もうオレが君に言えることは全部言ったしね。

君はもう君の中にすべて答えを持ってると思うよ。

……でも、ありがと。うれしいよ」


明るくやさしい笑顔に。


ズキ……


あたしの胸を、何か鋭いものがチクリと刺した。
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