ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
薄茶色のきれいな瞳がまっすぐ、やさしくあたしに注がれる。


「君は女の子でいていいんだよ。

男になろうとしなくていいんだ。

女の子でいいんだよ。

……なぜなら君は女の子なんだから」

「……」

「別にそれは変じゃないし、ごく自然な当たり前のことで、何ら本来の君と外れるものでもないよ」

「……」


さっきアヤが話してたことで、わかってた。

あたしは、一生懸命男になろうしていたってこと。

「女」であると思い知らされるような出来事を、必死で避けてたこと。

それは、パパに言われ続けた「長男」の役割を自らに課したため。


「男の子」でいないと、両親にあたしの存在を受け容れてもらえないって思ってたから。


「自分が女の子だって、受け容れてごらん。

きっと楽になるよ」

「……」

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