ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
あたしに惜しみなくポンと手渡すと、にっこり微笑む。


「着てみてよ。きっと似合うから。

んで、毎日鏡の前で、『女の子でいていいんだよ』って自分に唱えてごらん。

自分に毎日、言い聞かせるんだ。”女の子でいいんだよ”って」

「……でもあたし、別に女らしくなりたいわけじゃないし」


まだ抵抗するあたしに、薫さんは軽くうなずいた。


「うん、別にすごく女らしくなれなんて言わないよ。

ただ今の精神状態が本来の君じゃない、ちょっと歪んだ状態なんだと思うんだ。

だからこそアヤちゃんが分離してしまってるわけで。

それが治ったら、君はもっと楽に、のびのびと生きられるよ。

それが本来の柚希ちゃんの自然な姿だと思うし。

今のままだと、何かと窮屈なはずなんだ」


(窮屈……)


その言葉に、何となくピンと来た。

< 137 / 278 >

この作品をシェア

pagetop