ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
こんなものをわざわざ送ってくるなんて――

どういうことなのか、さっぱりわからない。


できれば気づかない振りをして無視してしまいたかった。

でも、先延ばしにするほうが事態がより悪くなる気がする。

不意に、狂気をはらんだ異様な双眸がまぶたの裏にちらついた。


(……仕方ない)


あたしは覚悟を決めて、発信ボタンを押す。


「黒川さん」

「……今日はどうして来なかったの?」


ひどくやさしい丁寧な声が、逆に怖かった。


「あの……すみません。具合が悪くて」

「本当に?」


わかってるよ、仮病でしょ、とでも言いたげな、からかうようなやさしい声。


「……」

「こないだは、どうして逃げたの?」

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