ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
(黒川さん……

まさか――あたしを脅迫してるの?)


あたしの感じたあの一瞬の狂気が、今や現実のものとしてあたしの前に立ちはだかっていた。

あのときの感覚は、勘違いじゃなかった。


(でも……一体どうして?)


どうして脅してまであたしを来させたいのか。

それがどうしてもわからない。


(ずっと紳士的でとてもやさしかったのに)


丁寧に的確な指導をしてくれて。

絵や画材のいろんな話をして。

最初こそ緊張したけれど、最近はとても楽しかったのに。

素敵な人だな、って思ってたのに。


――あれは、仮面だったの?

どうして急に、その仮面はかなぐり捨てられてしまったの?

一体何を考えてる?

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