ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
絵を横目で見ながらジュースを乾いた喉に流し込んだ。


「………おいしい」


生き返ったような気分。

思わず小さなため息をつくあたしに、薫さんは唐突に言った。


「ねぇ、柚希ちゃんが行ってるのって、黒川智弘のところでしょ?」

「え? そうだけど」


(知ってるの? あの人を――薫さんは)


画家仲間か何かかな。


「あっちから声を掛けられたの? 自分のところに通えって」

「え?」


(あたしの絵を見込んでってこと?)


そんなわけないよ。


「ううん、違うよ。

ママの仕事先の人がね、たまたま知り合いだったから紹介してくれたの。

O美大出身だし、O美大関係者だからって」

< 156 / 278 >

この作品をシェア

pagetop