ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「そう。そして、兄貴は俳優じゃない」


薫さんは苦々しく言う。


(あ……)


“裏切り”


「不幸にも、事故の犠牲者が秋月レイだとはすぐに判明しなかったからね。

相手の俳優の家を出たところのスクープ写真は翌朝のスポーツ紙にでかでかと載ってしまって、あることないこと書かれた。

朝のテレビでもじゃんじゃん流れた。

その後彼女が亡くなったことがわかって、逆にさらに騒がれてしまった」


「……うん」


他に大きい事件もなかったこともあって、当時の過熱ぶりは異常だった。

悲劇だ、悲劇だと口々に言いながら、みんな若くして突然亡くなった彼女の不幸を面白がっていた。

亡くなる少し前にドラマで幽霊役を演じていたことが、騒ぎに拍車を掛けた。

しかもちょっとしたスキャンダルが報道されていた頃にはもう死んでいたという珍しい事態を、「お気の毒」などと言いながら、面白おかしく何度も何度も繰り返して。

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