ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
うれしそうににっこり微笑む。

ついついこっちまでつられて微笑んでしまう、そんな笑顔。


(きっと薫さんは、みんなが幸せでいることがうれしい人なんだね)


だからきっと、あんな絵が描けるんだ。

人を幸せにできる絵。

心の中に、美しい世界を持ってる。

だからこんなに澄んだ、きれいな目をしてるんだ。


(あの絵をそんな風に思ってもらえたなんて、うれしいな)


もう、それだけでいいや。

多くは望まない。



おそらく一人で微笑んでいたあたしを、薫さんは横からのぞき込んだ。


「ちょっとは顔色良くなったかな。大丈夫?」

「うん」

うなずくあたしに、ふっと表情が真剣になる。


「……ねぇ、柚希ちゃん。

さっきの話だけど……

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