ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
(――あれ?)


あたしはアヤ?

今、アヤになってる?


(――あ、あたし、アヤだ)


だってほら、アクセサリーショップでウィンドウショッピングしたこと、覚えてるもん。

そのとき、声を掛けられた――あのちょっと素敵な人に。

「かわいいね」なんて言われて、うれしくてそのままついていっちゃったんだった。


本屋でヘアカタログの立ち読みしてたら、となりで技術系の雑誌を見ていたのがあのロン毛の人だった。

あたしが落としたヘアカタログを拾ってくれて、「そのショートカット、似合ってるのにもっと短くするの?」って笑って言った。


人体デッサンについて黒川さんと話していて、モデルはどういう人がなるのか、なんて話になったっけ。

それで、あたしもモデルになれますか、なんて聞いちゃったから、やってみる? ってことになったんだよね。

「いいよ、描いてあげる。君ならいいモデルになると思う」黒川さんは微笑んでそう言ってた。


なんだ、アヤってこういう気分なんだね。

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