ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
不意に背後から声がして。

あたしは悲鳴をあげて椅子から飛び上がった。


(黒川さん!)


ドアの枠にもたれた、すらりとした姿。

細い、きれいな指の間に挟んだ小さなSDカードを、微笑みながらあたしに示す。


(うそ、いつからそこにいたの――?)


「残念だったね、柚希」


面白そうにニヤリと形の良い唇が持ち上がった。


「このカードの中にもあるし、外付けハードディスクの中にもデータが同期されてるよ。

Macの中身だけ消したらすべてOKだとでも思ってたの?

……それにね、ゴミ箱を空にしたくらいじゃ、完全にデータは消えないんだよ。

いくらでも復元できる」


ゆったりとした足取りで、Macの椅子に座ったまま動けないあたしに近づくと、細い指先であたしの顎を持ち上げた。

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