ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「――ばら撒かれるのはイヤだけど、黒川さんみたいな人にこんな風に脅される材料にされるよりはずっとましだから」


最後の方は、涙が滲んでた。


「……」


黒川さんは、あたしを表情の読み取れない目でじっと見ていたけど。

ふと、「面白い」とばかりに眉を上げて、上品に微笑んだ。


あたしの座っている椅子を、あたしごとくるりと回してMacに向けると、左腕をあたしの肩に回してやさしく抱き寄せた。


(わ)


右手でSDカードをMac本体に差して、中のファイル一覧を開く。


「そこまで言うなら、写真をネットに流してあげるよ。

確かにこれで、僕の切り札はなくなる。

……そうまでして僕から自由になりたいならね」


ほんのり笑いを含んだ声。


(――え?)

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