ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「はぁ……」


ほっとため息をついて体の力が抜けたあたしの耳元に、静かな声がささやく。


「安心して。

柚希の写真をネットにばら撒くなんてしないよ。

――僕を二度と騙さないならね」


息が止まりそうだった。


(だめだ、あたしじゃこの人には勝てない)


「でも、これ以上僕を欺くようなことをしたら――」


黒川さんは、そこで言葉を切った。


(――したら?)


どんな言葉が続くのか、あたしは震え上がってた。

殺す、とでも言われかねない気がしたから。


なのに。

黒川さんは黙ったまま、じっとあたしの目を見てた。

その闇を切り取ったような黒い瞳に宿る、底知れない深い悲しみに、あたしはふと気づいた。

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