ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「ほんとに。だからお願い、行かないで」


(行かないで、ここにいて!)


あたしの隣に。


薫さんの腕をぐいっと引っ張って、強引にベンチに座らせる。


「じゃあ、さっきはどうしたの」

「……あれは、あたしが悪いの。黒川さんのせいじゃない」

「……?」

「ほんとに、何でもないから。

ちょっと、あたしが触っちゃいけないものを触っちゃっただけ。

それでちょっと……ね。

大丈夫。もう落ち着いたから」

「……」


(心配してくれてるのに……ごめんなさい)


心配そうに首を傾げる薫さんに、心の中でそっと謝った。


薫さんには黒川さんと敵対してほしくない。

それもあったけど。

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