ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
今薫さんが黒川さんのところに行ったら、黒川さんに気付かれてしまいそうで。

――薫さんへのあたしの気持ちを。

また一つ、脅される種が増えないとも限らない。


あたし一人で何とかしなくっちゃ――


(でも、あたしじゃ絶対あの人には勝てない)


さっきの絶望感を思い出す。


――いや、あたしが余計なことをするからいけないんだ。

今日だって、あたしがファイルを消そうなんてことをしなければ、何も起こらなかったはず。

もっと落ち着いて考えれば、いつかどうにかなる。

大人しくしておいて、機会を伺えば、きっと――


ふと横を見ると、黙り込むあたしを横から薫さんがじっと覗きこんでた。

心配そうに。


(――いい。黒川さんのことは後で一人で考える)


せっかく薫さんといるんだもん。


「ね、薫さん。そんなことより……」

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