ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「いわゆる4年制大学を高校の先生からしつこく勧められたけどね。

でも、研究者になりたいわけでもないしさ、行きたいと思えないからって。

そんなことで時間使うなんてばからしいしね。

うちの高校で、浪人じゃなくて大学行かなかったの、実はオレだけ」


いたずらっぽい笑顔。

お金、じゃなくて時間、というところが薫さんらしいと思った。


「でもさ、だからこそ、この年でもそこそこキャリア長いよ。

最初はそれこそ極貧生活だったけどね。

まあ、それも楽しかったけど」


明るくにこにこ笑いながら、楽しそうに言う。


(ああ、公園でのんべんだらりと過ごすヒッピースタイルは、その頃の名残なのかも)


この人だったら、お金があろうがなかろうが、いつも明るく笑って楽しく過ごしてそうだな。


(この人とずっと一緒にいられたらな)


ついついそんなことを思ってしまって、そんな思いを追い出すように急いで頭を振った。

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