ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「うん」

「それって、昔は薫さんもそうだったの?」

「ああ、うん。そうだよ」


軽くうなずく。


「……うちはさ、ほら、兄貴がいたから。

昔から兄貴はすごかったからね。

周りの評価も高かったし、あちこちのコンクールで当たり前のように賞取ってたし。

兄貴は成績も良かったんだ。美大に行くのを逆に惜しまれたくらいにね。

最初は兄貴はすごいなぁ、くらいにしか思ってなかったんだけどさ。

ある日兄貴に『薫はもっと基礎をやれ』みたいなこと言われてさ」

「薫さんの絵って個性的だもんね」


あたしの言葉にニッと笑う。


「基礎なんてなってないのは確かなんだけどね。

そんなことどうでもいいって思ってたし。

でも、おまえは基礎をちゃんとやれば賞取れるから、基礎をやらないからダメなんだ、とか何とか兄貴が言い出して。

兄貴に認められたくて、描きたいものを描いてない時期があった」

「……ああ」

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