ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
それだけで心がホカホカして、くすぐったいけどうれしかった。


(あ、なんだか、すごく幸せ)


……ずっと、こうしていたいな。

この人と。

今ここで、時間が止まってしまえばいいのに。


(……もうこうなったら、薫さんがあたしを必要としてなくてもどうでもいい。

あたしの気持ちだけは伝えたい――薫さんに)


「薫さん。……あたしね」

「うん」

「薫さんのことが……」


横の薫さんを見上げると。

すぐ近くに、いつもの輝く太陽のような明るい笑顔があった。

こっちまでつられて微笑んでしまうような、明るい笑顔。

“この人にはあたしは必要とされてない”なんて苦しみすら溶けてしまいそうな。


心のわだかまりも、苦しみも、すべて――


(――あ)

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