ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
その笑顔を見た瞬間、気づいた。

自分の間違いに。


(――しまった)


「あたし、間違ってた」

「……え?」


突然のつぶやきに、薫さんはまた目を丸くする。


(あたし、どうして黒川さんと戦おうとしていたんだろう)


怖がって何度も逃げたり、騙して写真を消そうとしたり。

写真ばら撒けばいい、だなんて大見得を切ったり。


――敵対しても、何も生まれない。


あたしをもっと縛り付けようとして、ますます黒川さんは病的な方向に進んでいってしまうに違いない。


『北風と太陽』


有名な童話を思い出す。

そう。あたしは今まで北風だった。

< 213 / 278 >

この作品をシェア

pagetop