ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
ただ黒川さんに怯えて遠ざけようとして、必死で北風を吹かせてた。
それじゃだめなんだ。
太陽にならなくちゃ、旅人は決してマントを脱がない。
黒川さんは苦しんでるんだ。
誰よりも苦しんでるんだ。
今のあたしなんか比較にならないくらい、恐ろしい苦しみの中に何年もいるんだ。
どうにかして、黒川さんを苦悩の海の中からすくい上げてあげないと、決して事態は良くならない。
「あたし、わかった。薫さん。
あたしね、今まで黒川さんがすごく怖かったんだ。
だから、怯えて必死で遠ざけようとしてた。
ひたすら逃げようとしてた。
騙そうとさえしてた」
「……やっぱり何かあったんだね。
柚希ちゃん、ね、頼むからちゃんと話して」
あたしの腕を握って必死に訴える薫さんの言葉すら、今やあたしを素通りする。
それじゃだめなんだ。
太陽にならなくちゃ、旅人は決してマントを脱がない。
黒川さんは苦しんでるんだ。
誰よりも苦しんでるんだ。
今のあたしなんか比較にならないくらい、恐ろしい苦しみの中に何年もいるんだ。
どうにかして、黒川さんを苦悩の海の中からすくい上げてあげないと、決して事態は良くならない。
「あたし、わかった。薫さん。
あたしね、今まで黒川さんがすごく怖かったんだ。
だから、怯えて必死で遠ざけようとしてた。
ひたすら逃げようとしてた。
騙そうとさえしてた」
「……やっぱり何かあったんだね。
柚希ちゃん、ね、頼むからちゃんと話して」
あたしの腕を握って必死に訴える薫さんの言葉すら、今やあたしを素通りする。