ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「でもそれじゃ何も変わらない。

あの人の苦しみは決してなくならない。

あたしは、北風じゃなくて太陽にならなくちゃダメだったんだ」

「……柚希ちゃん。いい?

何があったのかわからないけど――

そんなに怯えたりあんなに泣いたりするようなことがすでに起きてるなら、君はもう兄貴に近づかないほうがいい」


薫さんはあたしの両肩に手を置いて、真正面からあたしの目をじっと見つめる。

真剣な眼差しで。


「兄貴にとっては、君は過去の傷を思い起こさせすぎるんだ。

危険な方向に転んだら、どうなるかわからない。

……やっぱり最初に気づいたときから何とかしておくべきだった。

いいね、柚希ちゃん。

――君はもう兄貴に会っちゃいけない。

約束して。ね?」


悔しそうに、必死に訴えかける薫さんの表情を見て。

あたしは折れた。


この人にはこれ以上心配を掛けたくない。

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