ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
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30分ほど特急列車に揺られて着いた駅を降り立って。

駅のすぐそばの大きなホテルに入る。

ロビーのカフェのソファに座ってしばらく待った。


(いい人だったな……山中さん)


山中さんはとても陽気な人で、あたしの突然の電話をずいぶん面白がってくれた。

山中さんは黒川さんを知ってるから、変に隠すこともない。

黒川さんが秋月レイさんのことでいまだに苦しんでいること、真相を知りたいことを話すと、ひどく親身になって聞いてくれて、快く連絡をつけることを約束してくれたのだった。

企画という仕事が示すとおり、きっと頭の柔らかい人なんだろうな。


(思えば、山中さんが黒川さんを紹介してくれたのが、今回のそもそもの始まりだったんだ)


――薫さんと出会えたことも。


人の縁って不思議だね。

いつか山中さんと会えるといいな。

待ちながら、そんなことを考えた。


(そろそろ時間だ……)

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