ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「……はい」

「何というか……魅力的な女だったよ。

男っぽくて大胆なのかと思いきや、女らしい細やかさもあって。

仕事には恐ろしいほど真剣で厳しくて、怖いほどだった。

相手がどんなにベテランでも自分の意見もバンバン言う強さがあってね。頑固だった。

それがいったん舞台を降りると、別人のように穏やかな女になった。

秋月レイは、そんな女だったよ」


「……はい」


わかる気がする。

バラエティ番組で見た秋月レイさんは、ドラマなんかのイメージと違って、ほんわかして穏やかな、女らしいやさしそうな人だったから。


「3本ほど舞台やドラマで共演して。

3本め……最後の舞台は恋人役だったんだ。

毎日毎日舞台上では甘い恋人同士でさ。

彼女を抱き上げて踊ったり抱きしめたり。

彼女は舞台では大胆だったからね。

舞台を降りてからも、俺には特別親しく接してくれた。

それで、ちょっとレイが俺に気があるんじゃないかなんて、俺は勘違いした」

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