ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「……」


あたしは控えめにうなずく。


「彼女はプライベートは秘密主義だったから、恋人がいるなんてそぶりは全然見せなかったよ。

それで、例の……最後の舞台の最終日の打ち上げのときに……」


清水さんは、辛そうに一度言葉を切って、唇を噛んだ。


「レイは頑張り屋でとにかく気を張るタイプでね。

千秋楽が終わってほっとして気が抜けちゃったんだろうけど、お酒が入ると具合が悪くなっちゃってさ。

そこで、俺が家に送り届けるって申し出て。

んで……ようは自分ちに連れ込んだわけだな。

古典的だろ?」


自嘲気味に歪んだ笑みを浮かべて、肩をすくめる。


「具合が悪いのにつけ込むなんて、我ながら浅ましい行為だったと思うよ。

でも、ことの次第に気づいたレイに泣かれちゃって、激しく拒まれちゃってさ。

結局何ひとつ出来なかったんだ。

そこで初めて、彼女に恋人がいることを知った。

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