ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
具合が少し良くなると、俺が送るというのをきっぱり断って、レイは自分でタクシーを呼んで帰ったんだ。

そのときだな、”お泊まり愛”で写真に撮られたのは。


――その後、事故に遭った」


「……」


「レイの恋人が誰だったのかは、結局わからなかった。

……いや、多分、必死で聞き回れば誰かは知ってたんだろうけどね。

俺は怖くてそれすらしなかったんだ。

我ながら卑劣だったよ。

あのときは俺自身、愛する女が突然死んで……しかもあんな状況で死んでしまって、それどころじゃなかったけどね。

俺が家に連れ込まなければ、レイは事故に逢うこともなかっただろうから……

毎日ただ自分を責める日々だったよ」


深くため息をつくと、清水さんは口をつぐんだ。


(黒川さん……レイさんはあなたを裏切ってなかった)


思ったとおりだった。

あたしは小さくうなずいた。

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