ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「あの打ち上げのとき、黒川くんは別の仕事があって、あとで遅れて合流したんだ。

俺たち――俺とレイと、入れ違いにね。

あと少し早ければ……具合の悪い彼女を送っていたのは黒川くんだったろうに。

黒川くんが打ち上げ会場に着いたら肝心のレイはいなくて、多分周りのやつらは何も知らないから、レイは俺とお先にしけこんだ、なんて言ってたに違いない」

「……」

「そのまま、レイは死んでしまった。

彼にとってはひどい悪夢だったろうよ」


(……黒川さん)


あまりにも悲しすぎる話だった。


(僕を裏切らないならね)


人を信じない、底知れない闇のような瞳。


(こんな苦しみを抱えていたんだね、黒川さん)


涙が不意にじわっと滲んで。

あれだけ怖いと思っていた黒川さんが、ふと、全然怖くなくなった。


黒川さんを、助けてあげたい。

心からそう思った。

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