ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
(きれいな瞳……)


どうしてこの瞳を、あんなに怖いと思っていたんだろう。

黒曜石のように深い黒い瞳は、今や真実の光を宿して、ただじっとあたしに注がれて。

キラキラ光る涙がその目に盛り上がっているのを、あたしは見た。


やがて瞼が閉じられてそっと唇が重なると。

すぐ近くで、すぅっと頬を涙がきらめきながら伝うのが見えた。


その美しさに、あたしは状況を忘れて一瞬みとれてた。


(智弘さん……)


なんて、美しい涙。


かわいそうに、ものすごく苦しかったんだね。

今まで、わかってあげられなくて、ごめんね。



(……!)


唇を合わせながら。

ワンピースの前のボタンが外されるのを感じてた。

ゆっくりと、1つずつ、着実に。

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