ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
そうだ。

眠りに落ちる直前、あたしの手に指を絡めて、智弘さんはこう言ったんだ。


ありがとう、って。



(疲れた――)


今、何時かな。

見上げると、壁の時計は6時半を差していた。


(もうこんな時間――)


……そろそろ帰ろう。



そっと絡まった指を外して。

ベッドを抜けだして服を着て、あたしはふらふらと外へ出た。



(もうレイさんの代わりはおしまい。

悲しいけど、彼女はもう天国へ行ってしまったから。

あたしは、一日限りのゴースト)


疲れた心と体を引きずって、ひとけのない薄暗い公園を歩く。

ヒールのある靴が引っかかって、歩きにくかった。

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