ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
身も心も疲れ果てて、振り返る気力もなかったけれど。

あたしにはこれは誰だかわかってた。


「……薫さん」


あたしの背後で止まった足音に。

半分だけ振り返る。


「部屋の窓から見えて、驚いた……幽霊でも見たのかと思った」


薫さんはあたしの隣にそっと座ると。

あたしの泣きはらした目を、問いかけるようにじっと見た。


「柚希ちゃん……?」

「……」

「これは……一体?」

「……今日はもうクタクタ。

今日1日ね、あたしレイさんになってたの」


無理に笑顔を作るあたしに、薫さんははっと大きく息を吸い込んで、薄茶色の澄んだ目を見開く。


「柚希……ちゃん」

< 244 / 278 >

この作品をシェア

pagetop