ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
きっと、ね。

今まで智弘さんがどれだけ苦しんでいたのか、あたし、今日ちょっぴりわかった気がした」

「……」

「最後、あたしに『ありがとう』って、言ってくれたよ」


じっと黙って聞いていた薫さんは。

美しい眉を悲しげに寄せて、思いつめたような瞳でじっとあたしの目をのぞき込んだ。

大好きな、薄茶色の澄んだ瞳。

月明かりに照らされて、白い頬が青ざめて見えた。


「柚希ちゃん……

君は、兄貴のことを……?」


あたしはうつむいて、黙って首を横に振った。


「何てことを……何て子なんだ、君は」


薫さんは、突然あたしをぎゅっと抱きしめて絶句した。


「まさか……兄貴を救うために、レイさんの代わりに兄貴に抱かれたのか」


(何も言わないでって言ったのに――薫さんたら)

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