ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
バスで見た広告がふと頭に浮かんだ。
見ていると心がどこかへ遠くへ旅しそうな、あの色彩豊かな美しい絵。
「でさ、うちの娘がO美大志望だ、なんて言ったら、紹介しましょうかって。
なんせ倍率30倍なんだから、頼れるコネは何でも頼っておいたほうがいいでしょう?」
ママは熱心にそう言うと、買い物袋をテーブルの上にドサッと置いて、ソファを回りこんであたしの隣に座った。
「絵なんて、絶対的な尺度のないものを審査するんだからさ。
多分好みとか傾向とかあると思うのよ。O美大の。
仲良くなって、その辺いろいろ教えてもらいなさいよ。ね、柚希」
「あー、うん。そうだね。
……何ていう人?」
「えっとね……」
帰ってきてから初めてママが黙った。
「……黒……黒川……さんっていったかな。
大丈夫、また連絡くれるはずだから。山中さんが」
見ていると心がどこかへ遠くへ旅しそうな、あの色彩豊かな美しい絵。
「でさ、うちの娘がO美大志望だ、なんて言ったら、紹介しましょうかって。
なんせ倍率30倍なんだから、頼れるコネは何でも頼っておいたほうがいいでしょう?」
ママは熱心にそう言うと、買い物袋をテーブルの上にドサッと置いて、ソファを回りこんであたしの隣に座った。
「絵なんて、絶対的な尺度のないものを審査するんだからさ。
多分好みとか傾向とかあると思うのよ。O美大の。
仲良くなって、その辺いろいろ教えてもらいなさいよ。ね、柚希」
「あー、うん。そうだね。
……何ていう人?」
「えっとね……」
帰ってきてから初めてママが黙った。
「……黒……黒川……さんっていったかな。
大丈夫、また連絡くれるはずだから。山中さんが」