ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「柚希はほんとそのスカート好きね」
「え? ……ああ、うん」
藍色の、抜染のスカート。
薫さんが唯一あたしにくれたものだから。
これがなかったら、薫さんと会ったことすら幻だったのかと思ってしまいそうなくらい、あたしたちの間にはこれしか残されていなかった。
薫さんは、あれから知らない間に引っ越してしまい、あたしの前からかき消すように姿を消してしまった。
あの特等席のベンチはいつも空っぽで、主を失って寂しそうにたたずんでいた。
気づけば写真も1枚もなくて。
あたしが思い出す薫さんはいつも、どういうわけか、最後に見た背中を向ける寸前の悲しい目をした薫さんだった。
あたしは薫さんのあの笑顔が大好きだったのに。
薫さんのケータイの番号すら知らなかった。
普通じゃケータイの番号を聞かないなんてありえないのに、なぜかあの人に関してはそういうことを思いつかなくて。
世俗的なことからかけ離れすぎていて、そんな発想が沸かなかったのかもしれない。
薫さんもそんなことに気が回る人じゃなかったし。
いつもあのベンチにいたから、あそこに行けばいつでも会える。そんな風に思ってた。
「え? ……ああ、うん」
藍色の、抜染のスカート。
薫さんが唯一あたしにくれたものだから。
これがなかったら、薫さんと会ったことすら幻だったのかと思ってしまいそうなくらい、あたしたちの間にはこれしか残されていなかった。
薫さんは、あれから知らない間に引っ越してしまい、あたしの前からかき消すように姿を消してしまった。
あの特等席のベンチはいつも空っぽで、主を失って寂しそうにたたずんでいた。
気づけば写真も1枚もなくて。
あたしが思い出す薫さんはいつも、どういうわけか、最後に見た背中を向ける寸前の悲しい目をした薫さんだった。
あたしは薫さんのあの笑顔が大好きだったのに。
薫さんのケータイの番号すら知らなかった。
普通じゃケータイの番号を聞かないなんてありえないのに、なぜかあの人に関してはそういうことを思いつかなくて。
世俗的なことからかけ離れすぎていて、そんな発想が沸かなかったのかもしれない。
薫さんもそんなことに気が回る人じゃなかったし。
いつもあのベンチにいたから、あそこに行けばいつでも会える。そんな風に思ってた。