ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
智弘さんは当然知ってるはずだけど、あたしはどうしても聞くことができなかった。

それが何を意味するか、智弘さんはきっとすぐに気づくから。



壁に飾られたカレンダーを眺めては涙する1年間ももう過ぎて。

今年はあたしは、薫さんのカレンダーを買わなかった。

涙でぼやけてしまって、はっきり見えないカレンダーなんて、役に立たないから。


-------


出掛けようと靴をはいているときに、ケータイが鳴った。


(あれ? ……克己?)


克己とは卒業式以来特に連絡しあってない。

なんだろう。


「はい、どうしたの?」

「柚希? ちょい久しぶり。

O美大、いけたんだって? おめでとう」

「あ、ありがとう」

「ちょっと小耳に挟んだんだけどさ」

「うん」

< 259 / 278 >

この作品をシェア

pagetop