ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「……そっか」


そんな名前じゃなかったはず。


軽く失望して、初めて気づく。

あたしったら、ひそかに期待してたんだ。

バスの広告で見たあの人じゃないか、なんて、ね。


(売れっ子なのに、生徒なんて取るわけない)


何を期待してたんだか。

あたしは一人、肩をすくめた。



「よし。夕飯作らなきゃ」


膝をバシッと手のひらで叩いて気合を入れて立ち上がったママにつられて、あたしも立ち上がった。

その背中に声を掛ける。


「あの、ママ……」


くるりと振り返ったママの表情は明るかった。

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