ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
紅葉1枚1枚が生きているように、生命を謳歌している。そんな絵。

手前の花畑には、笛を吹く子どもたちが楽しそうに歩いている。


(柚希ちゃんのあの秋の絵に触発されちゃったから、また今度、オレなりの秋の絵でも描いてみようかな)


あのとき言ってたの、この絵がそうなのかな。

ちゃんと描いてくれたんだね。

あたしの描いた絵なんて足元にも及ばない、胸の奥の何かを呼び覚ます、魂の震える素晴らしい絵。


――やっぱり薫さんはすごいな。


あたしはこっそり目尻の涙を拭く。

そんなあたしを、智弘さんはじっと見ていた。



「ねぇ、どうやったらこんな絵が描けるの?」


新作を指差してそう聞くあたしに、智弘さんは笑った。


「何言ってるの。柚希だって描けるでしょ、これくらい」

「あたしが描いたら、こんなはかない感じにならないよ。もっと健康的な感じになっちゃうもん」

「それは柚希の心が健康なんでしょ。いいんじゃないの」


智弘さんはあたしの肩をぐっと抱き寄せて楽しそうに言った。

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