ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
-------



やがて、落ち着いて、あらかた涙が引くと。

あたしは薫さんを見上げて微笑んだ。

泣きはらした、ヒドイ顔だっただろうけど。


「あのね、薫さん。

あたし……あなたに言ってなかったことがあるよ」


お互い、どこかでわかっていながら言葉にしていなかったこと。

言葉にできなかったこと。


「柚希ちゃん。

オレもあるよ、君に言ってなかったこと」


薫さんもにっこり微笑んでそう言った。


ほがらかな、明るい声。

あの頃と変わらない、明るい微笑み。


太陽のように、見る者すべての心を潤す、輝くような笑み。

< 275 / 278 >

この作品をシェア

pagetop