ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「……そうだね、君の絵はとてもまとまってるんだ。

まとまり過ぎてると言っていい。

もうちょっと、はっとするような部分があるといいね」


そう言いながら。

椅子に座るあたしの後ろに立っていた黒川さんは、あたしの肩越しに腕を伸ばして絵の具を混ぜて筆に取る。

もう片方の手は、あたしの肩にさりげなく伸びた。

収まりがいいところを探すかのように、肩に置かれた手がさするように動く。


「例えばこの辺に……描いていいかな? ……こういう色を乗せる」

「ああ……」

「ちょっと意外な色だけど、引き立つでしょ」

「あ、はい。そうですね。ほんとだ」

「この構図もいいんだけど、例えばここにもっとフォーカスして、ここだけ細い筆で細かく描き込むともっと遠近感が出て迫力が出る」

「ああ。面白いかも」


よくわかる指導。


ちらっと横を視線を向けると、すぐそばに黒川さんの整った横顔があった。

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