ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
黒い前髪のかかる、すぅっと伸びた細い鼻梁が視界に入って。

耳に息がかかりそうなくらいの距離。


(わ、近い……)


黒川さんはまっすぐ絵を見て話し続けてるから、あたしの視線には気づいてないと思う。

……多分。


静かなマンションで、二人っきりで。

黒川さんも、以前のスーツ姿と違ってちょっとラフないでたちで。


(1枚の絵に2人が描いてるんだからしょうがないけど……

若い男の先生にこれだけみっちりひっついて教えてもらうのも、何だか落ち着かないなぁ)


なんて余計なことを考えた。

しかも、これがずいぶんな美男子と来てる。


(って、どぎまぎしてる場合じゃないから)


あたしってば、柄でもない。

手が触れたり、近づいたりするのは指導上しょうがないよ。

それ以外は完璧に紳士的なんだから。

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