ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
多分黒川さんも、そんなこと意識してないはず。

指導も適切で、とてもわかりやすいし。


あたしは黒川さんの言っている言葉に集中しようと、雑念を払いのけた。


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初回のレッスンが終わってマンションのドアを抜けると。

(はぁ〜)

ずいぶん緊張して肩の力が入っていたことに気づく。


外はもう暗くなって、公園の中の散歩道を街灯がぼんやり照らしてた。


(思ったよりも暗いな、公園の中は)


公園の小道の両側は木が鬱蒼と茂ってる。

その葉っぱが黒い細かいシルエットになって、まるで影絵の世界に迷い込んだみたい。

黒い空には高く月がかかって、何だか幻想的でもある風景に心を打たれる。


(もうすぐ紅葉の季節だし、そうなったらこの公園、すごくきれいだろうな)


秋はあたしの好きな季節。
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