ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
こんな花粉症フル装備で見た目がいかにも怪しいのに、人目も別に気にしてるようじゃないし。

のびのび自由に好き勝手に過ごしてるその姿は、まるで子どもみたいでとってもほほえましくて、何だかうらやましくもあった。


(ヒマな学生さんか何かかな)


何だかまるで生活感がない。

この人の周りだけ、別の時間が流れているようにさえ思ってしまう。


(今日は何をしてるんだろう)


気付かれないようにこっそり目をやると。

何と今日は、絵を描いていた。

ベンチに座って、大きなスケッチブックを膝に立てて、何やら描いている。

気のせいか、花粉症用メガネの奥の目がにっこりと細まっているように見えた。


(楽しそう……何を描いてるのかな)


ふと興味が沸いて、進行方向を少し変えた。

大きな絵を抱えて、こっそりベンチの後ろ側へ回る。

ゆっくり通り過ぎながら、ちらっと絵に視線を落とした。

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