ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「これ……2年近く前に描いたものだから」


あたしは思わず返事した。


確かにこの絵は悪くないと自分でも思う。

でも、技法自体は明らかに上達してるわけで。


(あなたは古い方をいいと言ったんだよ)


絵のことなんて、何もわからないでしょ。

そういう皮肉を込めて。


そしたら。

ほう、とでも言いたげに眉を上げて、軽くうなずいた。


「なるほどね」

「……?」


持っていた絵筆をパレットに置くと、ゆったりと立ち上がった。

すると、絵筆がコロコロと転がって、地面に落ちた。


「ありゃ、土付いちゃった」


がっかりしたようにそう言いながら筆を拾い上げると、あたしの方へ歩いてきて、首をぐっと伸ばして絵をのぞき込む。

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