ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「……おやおや」


花粉症さんは、どこか芝居がかった仕草で肩をすくめた。


「返答を逃げたね。

……聞いちゃいけないことを聞いちゃったのかな。

ごめんごめん」


楽しそうにくすっと笑うと。

それきりあたしには興味をなくしたのか、ふたたびベンチに腰掛けて、スケッチブックを持ち上げた。

絵筆に絵の具をつけようとして、べっとり付いた砂をどうしたものか困ってる。


(……何なのよ、一体)


あたしはムカムカしたまま、足早にそこを離れた。

怒りで足取りが乱暴になる。

なぜかちょっぴり涙が出そうになった。


バスに乗っても、なかなか怒りは収まらなかった。


どうしてそんなに腹が立ったのか。

自分でもわかってた。


痛いところを突かれたからだってことを。


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