ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……

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2.
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「今日はありがとうね。

じゃあまた、来週ね」

「……あ、はい」


ふと我に返ると。

あたしは黒川さんのマンションのドアの前に立っていた。

意味ありげに微笑む黒川さんの黒い瞳が、閉じられる扉の向こうに消えるのを見送りながら。


(あれ?)


あたし、何してたんだろ。


「あ!」


あわててケータイを出して時間を見た。

きっちり2時間経ってる。


(うそ……

レッスンの間ずっと意識が飛んでたのかな?)


何も記憶がない。

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