ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
「……」

「だから、全く入らなくなった。

何かに似てると思わない?」


「……え?」


(何のこと?)


突然そんなことを言われて、あたしは思わずぽかんとしてしまう。

花粉症メガネの奥の薄い色の涼しげな目が、すぅっと微笑むようにやさしげに細まった。


(――?)


「1発めに見事に入った玉が、こないだの賞を取ったっていう君のあの素晴らしい絵だね。

2発め以降の玉は、あれこれ考えすぎてクソつまらなくなってる君の最近の絵」

「……!」

「あの秋の絵を描いたときは、のびのびと、描くこと自体を楽しんで描いてたでしょ。

何も考えず、好きなものを好きなように、心の赴くままに描いてた。

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