ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……
だから絵に開放感があって生き生きとしているし、見る人の心を打つんだよ。


しかし、幸か不幸か、それが大きな賞を取ってしまってから、君は変わってしまったんだ」

「……」

「大きな賞を取ったから次もいいのを描かなくちゃとか、評価されたいとか、認められたいとか、うまく描かなきゃとか、期待に応えなきゃとか……

余計な力があちこちに入って、カターい絵しか描けないし、見る方も肩に力が入ってしまう」

「あ……」

「変に技術があることが災いして、絵が評価を得る道具になってしまってるわけだ。

最初はそうじゃなかったはずなのに」

「……」

「ずっとそんな気持ちで描いてて、あれこれ悩んで、つらかったでしょ。

でも描かずにいられないんだよな。

評価されればされるほど、増大する欲を止めるのは難しい。

欲には際限がないからね。

わかるよ。かわいそうに」

「……」


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